妊娠中~授乳中のメイラックス使用注意点

 

近年、不安やイライラ・睡眠障害などの症状で、精神科に通う女性が増えています。男性の2倍もの女性が、症状に悩んでいるのです。

 

若い女性であれば、妊娠する可能性もあります。突然、妊娠がわかったら、「このままメイラックスを飲み続けて良いのか」「授乳中だけやめれば良いのか」など、安全性について、さまざまな疑問がでてくるでしょう。

 

ここからは、妊娠と授乳中にメイラックスを飲んで良いのか、悪いのかをみてみましょう。

 

妊娠中の精神的変化について

女性の体は妊娠によって大きく変化します。まず、女性ホルモンの分泌量が増えます。女性ホルモンは2種類あり、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)と呼ばれています。

 

黄体ホルモン(プロゲステロン)は妊娠に不可欠なホルモンですが、妊娠して分泌量が増えると、皮脂の分泌がさかんになったり、色素沈着しやすくなったりします。さらに、精神的に不安定になり、イライラや落ち込み、意欲の低下などの症状がおこってきます。

 

普段は健康な精神状態である人なら、これらの症状がでるのでたとしても、あまり心配しなくても良いでしょう。ただし、以前からメイラックスを服用しているような、精神的に不安がある人の場合、症状がさらに悪化することがあります。

 

メイラックスの添付文書には、

 

妊婦( 3 箇月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

 

と書かれています。

 

これは、「極力控えて欲しいけど、メイラックスを飲まないことでお母さんの精神状態が悪くなるのであればメイラックスを飲んでも良い」ということです。この判断はとても難しいため、診察をうけた医師の判断にしたがいましょう。

 

医師が判断した結果、妊娠中にメイラックスを服用することになったら、赤ちゃんへの影響ばかり考えないことです。マイナスイメージを持ったまま、薬を飲んでも、それが新たなストレスになることもあります。医師の判断でメイラックスを飲むことになったなら、「精神状態が良くすることが赤ちゃんのため」と信じて服用しましょう。

 

妊娠中のメイラックスのリスクとは

では、具体的には妊娠中にメイラックスを服用した場合、どんなリスクがあるのでしょうか。妊娠初期と妊娠後期で以下のような報告があります。

 

妊娠初期(~3カ月) 動物実験では、奇形が多くなるというデータがみられます。また、メイラックスと似た系統の「ジアゼパム」では、人間でも奇形が増えるという報告もあがっていますが、メイラックスの場合は定かではありません。
妊娠後期(3か月~出産) 新生児に筋弛緩や低体温、仮死状態などの報告があります。

 

妊娠3か月までの妊娠初期では、「奇形が多くなる」というリスクが報告されています。ただし、この結果を否定する意見もあります。

 

妊娠後期の服用については、赤ちゃんの体への影響は避けられないでしょう。それは、赤ちゃんの体重が大人と比べて、10分の1にも満たないからです。たとえ、お母さんが飲んだ薬が微量であっても、赤ちゃんに与える影響は大きいといえます。メイラックスの作用があらわれた場合、筋弛緩や低体温などのリスクがあると考えられています。

 

FDA(アメリカ食品医薬品局)の判断基準をチェック

胎児がどんな影響を受けるかについては、FDA(アメリカ食品医薬品局)が医薬品ごとに評価しています。危険度と内容については以下のとおりです。

 

薬剤胎児危険度分類基準

A

CONTROLLED STUDIES SHOW NO RISK(ヒト対照試験で、危険性がみいだされない)

 

解説:しっかりと試験を行ったうえで、危険であるという証拠が出なかったもの。

B

NO EVIDENCE OF RISK IN HUMANS(人手の危険性の証拠はない)

 

解説:動物実験では危険性を示す証拠がないが、人の実験はしていないもの。

RISK CANNOT BE RULED OUT(危険性を否定することができない)

 

解説:動物実験では危険性を示す証拠があるが、人での実験ではしていないもの。

D

POSITIVE EVIDENCE OF RISK(危険性を示す確かな証拠がある)

 

解説:動物実験でも、人での実験でも、危険性が確認されているもの。

x

CONTRAINDECATED IN PREGNANCY(妊娠中は禁忌)

 

解説:胎児への危険性の決定的な証拠があり、服用が禁忌であるもの。

 

メイラックスの評価はされていないのですが、同じジャンルのBZD作動薬の「セルシン」「ワイパックス」「ソラナックス」などでは評価「D」となっており、メイラックスも同程度の評価となることが予想されます。

 

つまり、妊娠中のメイラックス服用は、データの上でも危険性が確認されており、「禁忌まではいかないが、服用は避けるべき」ということがわかります。

 

メイラックスを飲んでいて予定外の妊娠をしたら?

メイラックスを服用している女性が、予定外の妊娠をすることもあります。

 

こうしたケースでは、薬を中止する方向で考えます。ただし、長期間の服用などで、離脱症状を起こす可能性もあります。離脱症状には、気持ちがひどく不安定になったり、睡眠障害などの症状があります。

 

それらの症状は、妊婦さんには悪い影響をおよぼし、最悪のケースでは流産をおこしかねません。さらに、睡眠不足は、赤ちゃんの成長をさまたげる原因にもなります。お母さんの精神を落ち着かせ、不眠を解消するための手段として、最小限までメイラックスを減薬する方法が多くとられています。

 

また、赤ちゃんへのリスクが少ない、別の抗不安作用がある薬を試すこともあります。漢方薬やサプリメントなど、作用の弱い薬は、赤ちゃんへの影響も少ないといわれています。

 

お母さんの体調によって治療方法はさまざまですが、どんな方法であっても、医師としっかり相談して、最善の方法を見つけることが大切です。

 

一番気をつけなければいけないのは、予定外の妊娠です。急に妊娠がわかると、計画的にメイラックスを減らしたり、やめることが難しくなります。不安な気持ちで妊娠・出産をむかえることがないよう、メイラックスを飲んでいるときは、予定外の妊娠には気をつけましょう。

 

授乳中にメイラックスを飲むと母乳の成分はどう変わる?

授乳中のお母さんがメイラックスを服用すると、成分はそのまま母乳を通して赤ちゃんに入るため、赤ちゃんへの薬の影響は避けられません。

 

どんな影響がでるかというと、睡眠サイクルがくるったり、筋弛緩によって運動機能が低下する可能性があります。

 

ただし、妊娠中とは違い、授乳中であればメイラックスの影響を避けることができます。赤ちゃんは母乳でなければ育たないわけではありません。つまり、母乳ではなくミルクをあたえれば良いのです。今は、「完全ミルク育児」という方法もあるほどです。

 

ミルクだけをあたえる場合、ひとつだけ問題があります。それは、お母さんの免疫を赤ちゃんに分けることができないことです。この問題を解消するためには、産後2~3日だけ初乳をあたえましょう。初乳にふくまれる「免疫グロブリンA」という物質は、赤ちゃんの成長に大きく影響するといわれています。メイラックスの成分を摂取するリスクは多少ありますが、免疫物質をあたえるメリットのほうが大きいといえるでしょう。

 

最後に

メイラックス服用中は、予定外の妊娠をしないよう注意しましょう。妊娠中のメイラックス服用は、お腹の赤ちゃんに影響を与えるリスクがあり、むずかしい判断が求められます。妊娠中は断薬が望ましいですが、流産の可能性が高ければ、服用量をへらしたり、影響の少ない薬に変更することもあります。いずれも、医師とよく相談することが必要です。

 

授乳中は、「完全ミルク育児」で赤ちゃんへの影響を防ぐことができます。ただし、産後2~3日までの初乳だけは、赤ちゃんへ免疫をあたえるため、飲ませてあげることが重要です。